「私は昔から腰痛持ちだから」
「もう長年この痛みと付き合っているから、私の身体はこういうものなんです」
来院される患者様の多くは、ご自身の不調や痛みを「私という人間の変わらない一部(体質)」として受け入れてしまっています。しかし、当院ではその根本的な思い込みに疑問を投げかけます。
あなたが「私」だと思っているその痛い自己像は、本当に永遠不変の実体なのでしょうか?
今回は、「私」という存在がどのように発生しているのかを、仏教の「仮我(けが)」という教えと、自己意識の発生を数学的に証明した最先端の数理モデルから解き明かします。
苫米地定理が証明する「自己意識の発生」(数理モデルの視点)
認知科学者・苫米地英人博士の『自己意識存在・発生定理(定理16)』は、私たち人間が持つ「私(自己意識)」というものが、脳内でどのように物理的(数学的)に発生しているのかを証明しました。
定理16では、自己意識の正体と条件を以下のように厳密に定義しています。
① 自己意識の正体は「固定点($S_{i,h}^*$)」である
脳内に最初から「私」という小人が住んでいるわけではない。システムが情報をフィードバック処理し続けた結果、数学的に結像した一つの安定ポイント(固定点)こそが、自己意識である。
② 自己意識は、入力履歴($h$)に相対的である
この固定点は、過去の環境や情報といった「入力履歴」を処理した結果として発生する。全時点に共通する不変の実体(絶対的な私)は存在しない。
固定点は固定した履歴 $h$ に相対的であり、全入力・全時点に共通する不変実体を意味しない。定理は機能的自己意識を証明するが、クオリアの存在や特定の神経実装を証明しない。
引用元:苫米地英人『苫米地四法印定理 認知ホメオスタシス・自己意識・抽象度自由論・象徴臨場感から
諸行無常・一切皆苦・無我・寂静へ』(暫定公開版)
この厳密な数式の事実を、私たちの身体とコンディショニングに分かりやすく翻訳すると、次のようになります。
【KUMADEの臨床的翻訳】
「私」という普遍的な実体(魂)が最初から存在しているわけではありません。「痛い私」という自己意識は、これまでのケガや失敗した治療経験、日常の悪い動作といった「過去の履歴($h$)」を元にして、脳が毎秒毎秒計算して弾き出している「一時的な計算結果(錯覚)」に過ぎないということです。
仏教的な視点から:「仮我(けが)」と五蘊の和合
仏教では、私たちが「これが私だ」と思っている自己意識を、永遠不変のものとは認めず「仮我(けが=仮の私)」と呼びます。
仏教において、人間の存在は「五蘊(ごうん)」と呼ばれる以下の5つの要素(条件)から成り立っているとされます。
- 色(しき): 肉体や骨格などの物質
- 受(じゅ): 痛みや心地よさを受け取る感覚
- 想(そう): 感覚から生まれるイメージや過去の記憶
- 行(ぎょう): 治そう、動こうとする意志や行動
- 識(しき): それらを総合して判断する心(意識)
ブッダは、「私」という確固たる不変の実体がドンと存在しているわけではなく、これら「肉体・感覚・記憶・意志・意識(五蘊)」という5つのパーツが、過去の履歴によってたまたま今この瞬間に集まって(和合して)、一時的に「私」という現象を作り出しているに過ぎないと喝破しました。 パーツの集まり方に過ぎないため、条件(履歴)が変われば、「私」も瞬時に別のものに変化します。
定理16の「自己意識は履歴に相対的であり、不変実体ではない」という数学的証明は、まさに2500年前の仏教が説いた「五蘊の和合」と「仮我(無我)」を、現代のトポロジー(位相幾何学)を用いて完全に裏付けたものなのです。
当院の臨床的な視点:「新しい履歴」を入力し、自己像をハッキングする
「痛い私」「治らない私」という自己像が、ただの一時的な計算結果(過去の履歴の集積)に過ぎないのだとしたら、どうすればそれを変えられるのでしょうか?
答えは非常にシンプルであり、数学的にも必然です。
「脳のシステムに、新しい履歴(成功体験)を強制的に入力すればいい」のです。
当院が部分的におよそ15分間の施術で行っているのは、単に筋肉を揉みほぐすことではありません。問診と触診を通じて、「あれ、痛くない方向に動けるぞ」「さっきより身体が軽いぞ」という【新しい身体の履歴】を患者様の脳に感覚的に自覚する作業です。
入力されるデータ(履歴)が変われば、計算結果である自己像(固定点)は必ずズレて書き換わります。
「腰痛持ちの私」という古い自己意識は内側から崩壊し、代わりに「自らの力で治癒へ向かっている新しい私」という自己意識が、自動的に発生(構成的発生)します。
結論:「痛い私」というレッテルからの解放
あなたがどれほど長く痛みに苦しんできたとしても、「痛い私」という永遠に変わらない実体など存在しません。
それは、過去の悪い履歴が一時的に作り出している幻影(仮我)です。
過去の履歴に縛られる必要はありません。当院での共同作業を通じて「新しい正しい履歴」を身体に入力し続ければ、あなたの脳は必ず「健康な私」という新しい自己意識を自動的に計算し始めます。
どうか「私はこういう体質だから」と諦めず、一緒に新しい自分(自己意識)を再構築していきましょう。