はじめに:親記事「自然治癒力とは一体何なのか?」を読んでくださったあなたへ
以前の記事で、私は「自然治癒力」の源泉が「弾力性」という生命エネルギーにあり、その力を目覚めさせる鍵は「自分を知る(自覚する)」ことにある、とお話ししました。
この記事は、その続編です。
今回は、その「弾力性」を奪い、あなたの身体が「自分を知る」ことを妨げてしまう、最も代表的な2つの要因 – 「水分が多い状態(むくみ)」と「過度に緊張している状態」 – について、そのメカニズムを深く掘り下げていきます。
なぜ、あなたの身体は自ら治癒のプロセスを止めてしまうことがあるのか。その答えが、ここにあります。
「むくみ」という名の、静かなる妨害者

細胞には、本来、傷ついたり疲弊したりしても自ら回復する力が備わっています。その「元に戻る力」の源泉こそが「弾力性」です。
そして、この弾力性を著しく低下させる状態の代表格が、「水分が多い状態」、つまり「むくみ」です。
身体は、炎症や外傷の際に、痛みを感じにくくするために、あえてその部位に水分を集め、むくませることがあります(外傷性浮腫など)。これは、脳への過度なストレスを防ぐための、非常に優れた自然な防御反応とも言えます。
しかし、この「むんだ状態」には、大きな落とし穴があります。 それは、知覚や感覚が鈍くなりやすい状態でもある、ということです。
つまり、むくんだ部位は、あなた自身が「自覚できない部位」となり、脳からの治癒指令が届きにくくなってしまうのです。脳は、その部位がどうなっているのか、まだ治癒が必要なのかを認識するためには、動かしたり触ったりして「まだ治っていないよ」というサインを受け取る必要があります。むくみは、その大切なサインをかき消してしまうのです。

痛み止めの湿布や薬も、これと似た側面があります。炎症を抑える一方で、結果的に局所をむくませて痛みを感じにくくさせているのです。もちろん、急性期の激しい痛みには有効ですが、常用することで脳がその部位の状態を「自覚」できなくなり、根本的な治癒が遅れたり、問題が先送りされたりする可能性には注意が必要です。
「過度な緊張」が奪う、生命線の流れ
弾力性を奪うもう一つの大きな要因が、「過度に緊張している状態」です。
筋肉や筋膜が過度に緊張し、硬くなっていると、その内部を走る血管は圧迫され、血流が悪くなります。その結果、細胞の修復に不可欠な酸素や栄養の供給が滞ってしまいます。
さらに深刻なのは、神経の通り道も圧迫されやすくなることです。これにより、脳と身体の間の情報伝達がスムーズに行われなくなり、これもまた「弾力性」を低下させ、回復を妨げる大きな要因となります。
探求を深めるための、いくつかの羅針盤(書籍紹介)
この記事で触れた「エネルギー」「自覚」「身体の構造」といったテーマは、私自身が長年探求し続けてきたものでもあります。その思考の旅路において、道しるべとなってくれた書籍をいくつかご紹介します。
- 📚 『E=mc2のからくり エネルギーと質量はなぜ「等しい」のか』
- 目に見えない「エネルギー」という概念を、物理学の視点から深く理解するための一冊。身体に働く力を、より本質的に捉えるためのヒントがここにあります。
- 📚 『空海と智の構造』
- 「自覚」や「認識」といった、心と身体の繋がりを探求する上で、東洋の叡智は欠かせません。物事の構造をどう捉え、理解していくか、その思考の深さに圧倒されます。
- 📚 『ミルトン・エリクソン心理療法 〈レジリエンス〉を育てる』
- 「治る力」とは何か。心理療法の天才ミルトン・エリクソンのアプローチは、身体の「弾力性(レジリエンス)」を高めるという私の考えと、多くの点で共鳴します。
- 📚 『トートラ人体解剖生理学』
- 全ての基本となるのが、人体という精緻なシステムの理解です。むくみや緊張といった現象が、身体のどの部分で、どのようして起きているのか。その土台となる知識が詰まっています。
まとめ:「自覚」こそが、治癒への第一歩
「むくみ」も「過度な緊張」も、それ自体が絶対的な悪なのではありません。時には、身体を守るための防御反応でもあります。
しかし、これらの状態が慢性化すると、あなたの身体は「自分自身を見失い」、治る力を発揮できなくなってしまうのです。
大切なのは、これらのサインに気づき、なぜ身体がそのような状態になっているのか、その根本原因と向き合うことです。
【関連する親記事】 ▶︎ そもそも「自然治癒力」とは何なのか?その力を目覚めさせる秘訣については、こちらの記事で詳しく解説しています。
あなたの身体は、常に治りたがっています。その声に耳を澄まし、治癒のプロセスを妨げている本当の原因を取り除いてあげること。それこそが、真の根本改善への、最も確実な道筋なのです。