はじめに:「骨折だから安静に」と言われたけれど…
足首を捻って病院に行ったら、レントゲンで「剥離骨折」と診断された。 「骨折なら、安静にするしかない」 「でも、言われた場所と、本当に痛い場所が少し違う気がする…」 「腫れもそこまでひどくないのに、本当に骨折なのだろうか?」
診断名に疑問を感じつつも、専門家である医師に言われた手前、何も言えずに不安な日々を過ごしてはいませんか。

この記事は、そんなあなたのために書きました。 レントゲンでの診断は非常に重要です。しかし、それが全てではありません。あなたのその痛みの本当の原因は、レントゲンには写らない、別の場所に隠れているかもしれないのです。
一般的な見解と、そこに隠された「本当の問い」
レントゲンで骨折が見つかれば、「安静にして骨が癒合するのを待つ」というのが一般的な治療方針です。もし骨片(骨のかけら)が大きければ、「将来的に悪さをするかもしれないから、手術も検討しましょう」と言われるかもしれません。
しかし、ここで一つの大きな疑問が残ります。 捻挫をした多くの選手は、たとえ靭帯を損傷していても、適切なケアをすれば、また普通にスポーツができるようになります。
『なぜ、レントゲンで「骨折」と診断されているのに、あなたの痛みは一向に良くならないのか?そして、なぜ靭帯のケアだけでは不十分なケースがあるのか?』
私の臨床が示す「核心的な答え」:「捻挫」という言葉の誤解と、「触診」の重要性
その答えは、まず「捻挫」という言葉の、一般的な誤解を解くことから始まります。「捻挫」とは、あくまで「ひねった」という動作を示す言葉であり、診断名ではありません。
しかし、レントゲンで分かるのは、基本的に「骨折の有無」だけです。そのため、「骨折がなければ捻挫(靭帯損傷)」と、少し単純化されて診断されているケースが少なくありません。
あなたの痛みが引かない本当の原因。それは、レントゲンに写った骨折が、今回の痛みの主原因ではない可能性があるからです。
【代表的な症例】レントゲンで見えない本当の原因
ここで、私の臨床で非常によく見られる典型的なケースをご紹介します。
本記事でご紹介する症例は、プライバシー保護のため、同様のお悩みを持つ複数のケースを基に、特定の個人が識別できないよう情報を再構成した「代表的な一例」です。
【典型的なケース】 バスケットボール中に足首を捻り、病院で「腓骨(外くるぶし)の剥離骨折」と診断。しかし、痛みが引かずに相談に来られる。
【私の所見】
- 触診: 骨折と診断された腓骨下部には、腫れも、押した時の痛み(圧痛)もほとんどないことが多い。
- 問診: 本人が一番痛いと訴えるのは、実は「内くるぶし」周辺だったりする。
- 評価: 詳しく触診していくと、脛骨(すねの骨)の下1/3あたりに、骨膜(骨を覆う膜)を損傷した時特有の、非常に強い圧痛を確認する。
【私の推測】 レントゲンに写っていた骨片は、過去に何度も繰り返した捻挫による**「古い骨折の跡」である可能性が高い。そして、今回の痛みの主原因は、レントゲンには写らない「脛骨の骨膜炎」**である。
ほとんどの医療機関では、時間の制約もあり、丁寧な触診を行わないケースも少なくありません。そのため、このような「画像診断と、実際の痛みの原因とのズレ」が見逃されてしまうことがあるのです。
診断の先にある、本当の対話
もし、このケースで「剥離骨折」という診断のまま、ただ安静にしているだけだったら、本当の原因である骨膜炎へのアプローチが遅れ、復帰までに数ヶ月を要していたかもしれません。
あるいは、それが本当の捻挫の原因だと考えられ、手術で骨片を取り除かれたとしたら、それは本人の意向に沿ったものでしょうか。多くの方はこう考えるはずです。「今までその骨片は痛くなかったのだから、そのままでいい。今回は別の場所が痛いのだから、その痛みが取れて、前のようにプレーできれば良い」と。
だからこそ、私は必ず本人と対話し、意思を確認します。「再捻挫すれば、古い骨片が悪化するリスクはゼロではない。そのリスクを理解した上で、それでも今の痛みを最優先で取り、競技をやりきりたいか?」と。
まとめ:診断名に、惑わされないでください
「剥離骨折」という診断は、非常に不安になる言葉です。
しかし、大切なのは、その診断名に一喜憂憂するのではなく、「あなたのその痛みは、本当にそこから来ていますか?」と、ご自身の身体と対話してみることです。
レントゲンは万能ではなく、医師もまたそのレントゲン検査が万能でないにも関わらず、触診視診を怠っていると感じたならば、まずはその痛みがどの組織の痛みから信号なのかまず把握する必要があります。そして、あなたの身体の本当の状態を知ることが出来るのも、あなた自身のはずです。
診断に少しでも疑問を感じたら、諦めてしまう前に、一度立ち止まって考えてみてください。その一歩が、あなたが再び痛みなくプレーできる未来へと繋がるはずです。
これは医師の診断を否定するものではありません。ただ、しっかり触って痛みの部位を確認してくれたかどうかこれをしなければ、絶対に捻挫の痛みを把握することは不可能です。長年私が臨床し、多くの捻挫を早期回復させてきた経験があります。