理論編:WHY?

【ストレッチの基本②】「1日何分やればいい?」という質問への、たった一つの答え

はじめに:「ストレッチは何分やればいいですか?」

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これは、私が最もよく受ける質問の一つです。 巷では「理想は25分~35分」と言われることが多いかもしれません。しかし、もしあなたがその「時間」に縛られているとしたら、ストレッチの最も大切な本質を見失っている可能性があります。

この記事では、「何分やるか」という問いからあなたを解放し、ストレッチの効果を最大化するための、たった一つの答えをお伝えします。

目的が「時間」を決める:脂肪燃焼と、身体の調律

まず、なぜ「25分~35分」という時間が推奨されるのでしょうか。 それは、運動を開始してから20~40分間が、脂肪燃焼効果が高まる時間とされているからです。つまり、この時間はダイエットや代謝アップを目的とする場合の一つの目安です。

しかし、もしあなたの目的が、身体の機能改善や「弾力性」の回復であるならば、話は全く変わってきます。

1日1分のストレッチが、身体を変える理由

例えば、腓骨の機能低下によって足首に問題を抱えている人が、その腓骨に関連するストレッチを毎日たった1分でも続ければ、その筋肉の弾力性は間違いなく向上し、機能は回復へと向かうはずです。

なぜなら、重要なのは「時間」ではなく、筋肉を伸ばした時に感じる「痛み」や「伸びている感覚」そのものだからです。

普段伸ばしていない硬い筋肉を伸ばした時に感じる、あの心地よい痛み。それこそが、「ここに問題がありますよ」と脳に知らせるための、最も重要なサインなのです。

この「感覚」を、1日にたとえ1回でも脳に「認識(自覚)」させることができれば、脳はその筋肉の治癒プロセスを開始します。これが、私が考えるストレッチの本当の目的であり、効果の本質です。

▶︎ この話の詳細は、こちらの記事で:

身体は「部屋」と同じ:毎日同じ場所を掃除していませんか?

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身体がすでに柔らかい人が、毎日同じストレッチを続けても、大きな効果は感じられないでしょう。 それは、毎日ピカピカな場所を、さらに拭き掃除しているのと同じです。

部屋を本当に綺麗に保つには、今日はキッチン、明日は玄関、と掃除する場所を変えていく方が、はるかに効率的ですよね。

身体も全く同じです。 一つのストレッチを中途半端に毎日続けるのではなく、「今日はこの筋肉」と決め、その筋肉がしっかりと伸びている感覚を脳に届けるその方が、身体全体は確実に良い方向へと変わっていきます。

なぜ、ストレッチの「科学的エビデンス」は役に立たないのか

この視点に立つと、なぜストレッチに関する科学的な研究(エビデンス)が、しばしば「効果はまばら」「やり方によってはパフォーマンスが下がる」といった結論に至るのか、その理由が見えてきます。

研究では、全ての人に同じストレッチを同じ時間行わせます。しかし、そのストレッチが「必要な人」と「必要でない人」が混在しているのですから、効果に差が出るのは当然です。

あなたの身体に必要なストレッチは、他の誰とも違います。その答えは、科学的なデータの中にはなく、あなた自身の身体の「感覚」の中にしか存在しないのです。

まとめ:あなたが本当に測るべきは「時間」ではなく「感覚」

ストレッチで効果を最大限に引き出したいなら、今日からストップウォッチを置くことから始めてみてください。

1分

あなたが本当に集中すべきは、「何分やったか」という時間ではありません。 「どの筋肉が、どのように伸びているか」という、ご自身の身体との対話、その「感覚」です。

もし、あなたがダイエット目的でストレッチを行うなら、25分~35分という時間は有効な目安となるでしょう。 しかし、それ以外の目的であれば、時間は関係ありません。

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