理論編:WHY?

【ストレッチの基本③】なぜ1分間伸ばすべきなのか?筋肉の再生と脳の「認知」

その情報信じていいですか?アイコン

はじめに:「ストレッチは何秒伸ばせばいいですか?」

「20秒くらい、ゆっくり伸ばしましょう」 あなたも、一度はそう教わったことがあるかもしれません。

しかし、もしその「20秒」という常識が、あなたの身体の可能性を最大限に引き出すことを妨げているとしたら?

この記事では、私がなぜ「1分間」という、少し長めのストレッチを推奨するのか、その背景にある筋肉の「再生」と脳の「認知」という、身体の驚くべきメカニズムについてお話しします。

大前提:「正しいストレッチ」でなければ、1秒たりとも危険です

本題に入る前に、一つだけ極めて重要な注意点があります。 私がこれからお話しするのは、あくまで「正しいフォームで、緩みなく均等に」行われるストレッチに限った話です。

もし、間違ったストレッチを続ければ、たとえ短い時間でも、あなたの身体は確実に蝕まれていきます。

例えるなら、筋肉は無数の細い線維が集まってできた、一本の強靭な電線のようなものです。電線全体に均等に負荷がかかれば1トンの張力にも耐えられますが、もし一部の線維が錆びついていたり(弾力性の欠如)、無理な角度から力が加わったりすれば(間違ったフォーム)、そこから「プチッ、プチッ」と切れていってしまうでしょう。

SNSで見かける多くのストレッチは、ある人には効果があるかもしれませんが、ほとんどの人にとっては、この良質な筋線維すら断ち切ってしまう「悪い痛み」を伴う、危険な行為になりかねないのです。

矛盾に聞こえる、本当の理由:「良い破壊」と「悪い破壊」

  • 「痛みがあったら無理してはいけないのでは?」
  • 「筋線維が切れるなんて、怖い…」

そう思われるかもしれません。しかし、ここには「良い破壊」と「悪い破壊」という、決定的な違いがあります。

人間の筋線維は、常に再生するという素晴らしい働きを持っています。そして、ここが最も重要なポイントです。古く、弾力性を失った機能不全の筋線維は、一度「破壊」されて掃除され、そこに新しくて丈夫な筋線維が作られるのです。

ストレッチとは「質の高い細胞の、大掃除」である

私が推奨する「正しいストレッチ」とは、いわば質の高い「大掃除」であり、「良い破壊」を意図的に引き起こす行為です。

しっかり均等に、緩みなく筋肉を伸ばすことで、その負荷にすら耐えられない古い、あるいは機能不全に陥った筋線維は、自然な形で壊れ、掃除されます。

そして、その「破壊と掃除」こそが、「ここに問題があるから、新しくて丈夫な線維を作ってくれ!」という、脳への最も強力なシグナル(認知)となるのです。

このシグナルを受け取って初めて、脳は治癒と再生のプロセスを本格的に開始します。これこそが、私の臨床の考え方と一致する、自然治癒力が働くメカニズムなのです。

なぜ「1分間」なのか?深層部へのアプローチ

筋肉を奥までの伸ばすストレッチ

では、なぜその時間が「1分間」なのでしょうか。 もちろん、20秒でも良いのです。しかし、私たちの筋肉には、様々な深さの層があります。

  • 5秒で悲鳴を上げる、表層の筋線維。
  • 20秒耐えられる、中層の筋線維。
  • そして、1分間伸ばし続けることで、ようやくアプローチできる、深層の筋線維。

1分間、緩みなく伸ばし続けることで、最も根深い場所にある、古くて弾力性を失った筋線維まで「大掃除」の対象とすることができる。それが、私が「1分間」を推奨する、本当の理由です。

まとめ:臨床に勝るストレッチはない

今日から、ストレッチの時間を「秒」で測るのをやめてみませんか。

大切なのは、「この1分間で、私の筋肉は新しく生まれ変わっている」という意識です。

そして、もう一つ。 あなたが感じているその「痛み」が、良質な筋線維を傷つける「悪い痛み」なのか、それとも古い細胞の再生を促す「良い痛み」なのか。そのやり方の鍵を是非くまでブログで学んで頂きたいと思います。

世界的に有名なトレーナーであっても、痛みや不調と日々向き合い、ストレッチを「処方」として扱ってきた臨床家の経験には及びません。

あなたの身体を本当に変えるのは、正しい知識と、信頼できる専門家との対話なのです。

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